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ヨハネス・フェルメール 恋文

 

この前紹介したハン・ファン・メ―ヘレンの被害者についてです。

 

Johannes Vermeer Liebesbrief (1669-1671)

 

今回は、ヨハネス・フェルメールの『恋文』を紹介しようと思います。

シターンを引く夫人の後ろからそっと手紙を差し出す召使いと、夫人のはっとしたような 表情との対比で有名なのが、この作品です。

召使いの夫人を安堵させようとするかのような笑顔から、その手紙は恋文であり、喜ばしい内容であることが伺えます。また、召使いの後ろに飾られている海と帆船の絵は、恋愛事情を寓意的に表しており、絵にあまり寓意性を織り込まないといわれているフェルメールにしては珍しい様式だといわれています。

これはフェルメールが自らの絵に変化を取り入れていたころの作品でもあり、モップやサンダルなど数々寓意表現や、表情に意味性を持たせないためか、召使のやや単調な顔立ちからも読み取ることが出来ます。

 

私がこの作品を見て気になったのは、何といってもこの不思議な構図です。

手前に描かれているドアや部屋の入口を見ると分かるように、この部屋の入口はとても狭く、そして細長くなっています。これは実際ではありえないことなので(わざと作れば別ですが)フェルメールが、鑑賞者の 視線を部屋の奥の2人にくぎ付けにするため、わざとこのような不自然な入口にしたと考えられます。

 

この作品のような恋と手紙という取り合わせは、絵画の世界でよく取り上げられている題材です。やはり昔の人もまず、気になった人がいればその人と手紙のやり取りから始めたのでしょうか。

現代においては、好きな人のメールアドレスやLINEを本人または友人と交換し、チャットのやり取りをし、親しくなっていくというような段階を踏むのが一般的なようですが、その手順は媒体と速度が違うだけで昔も今も変わらなそうですね。

 

この女主人も、気になるあの人から手紙の返事が来ない、まだ来ない、と待ちわびていたのでしょうか。